こんにちは、「トリセツ」担当のマルです。
さて、突然ですが、皆様は「TC検定(テクニカルコミュニケーション技術検定試験)」という資格をご存知でしょうか?
メジャーな資格ではないので、聞いたことのない方が大半かと思います。
試験概要
TC(テクニカルコミュニケーション)検定とは、「一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会」が主催する資格試験です。多彩な使用説明の発信に携わる専門家である「テクニカルコミュニケーター」の資格であり、取扱説明書の制作やディレクションに関わる業務を行う方がおもに受験しています。
私がこの資格試験をはじめて受験したのは、2009年のことでした。当時はカテゴリが異なり「初級」ではありましたが、何とか合格することができました。
その合格から10年以上が経ち、現在に至るまでの間に、TC技術検定の規格は変わりました。
「テクニカルライティング初級」「テクニカルライティング上級」のみだった試験は、2022年現在
・3級 テクニカルライティング試験
・2級 使用情報制作ディレクション試験
・2級 使用情報制作実務試験
以上3種の規格に変更となりました。
古い規格の資格、しかも初級をいつまでも持っていても仕方ないということで、2022年2月に全国(東京・名古屋・大阪・福岡)で開催される「3級 テクニカルライティング試験」を受験することにしました。
「3級」はテクニカルライティング全般の基礎的な問題です。「2級」は制作の進行管理や情報の表現設計・品質管理技術についての「使用情報制作ディレクション試験」と、取扱説明書に関する制作工程で求められる技術・知識に関する「使用情報制作実務試験」の2種類に分かれています。
(「1級」は検討中とのことで、2022年現在は開催されていませんので、現状は2級が最上級となります。)
2022年2月末の試験に向けて、取り急ぎテキストを購入して学習を始めました。
試験のための勉強が必要な状況自体が長らくなかったので、自分自身のキャリアにとってもいい機会と捉え、試験に向けての準備に取り組んでいきました。
試験結果(1回目)
2022年2月27日に試験を受け、約1か月後に結果が来ていました。
結果は…
「不合格」でした…。
選択問題は合格ラインだったのですが、記述問題で得点が足りなかったようです。
それから半年。
2022年7月24日に2回目の試験があったので、再度チャレンジしてみることにしました。
試験結果(2回目)
2022年9月1日に、結果が郵送されてきました。
結果は…
「合格」!
ということで、不合格からの再チャレンジで合格できたので、TC検定(3級)合格のためにやるべきこと、出題の傾向、試験を受ける際の注意点などについて書いていこうと思います。
テキスト「日本語スタイルガイド」
試験を受けるにあたって最初に必要なことが、TC検定(3級)のテキストである「日本語スタイルガイド」の購入です。2022年9月現在「第3版」ですが、数年に一度の改版でかなり内容が更新されるため、TC協会のサイトで調べて最新版を購入しましょう。
試験対策にはもちろんですが、「テクニカルライティング」の技術は取扱説明書の制作をはじめとしたさまざまな実用文書、さらには一般的なビジネス文書まで、人に伝わるわかりやすい文章を書く上で役に立つものです。
選択問題はすべて、この「日本語スタイルガイド」の内容から出題されます。全ての章から均等に出題されるわけではなく、出題されやすい章とあまり出題されない章があります(後述)。1回目(2022年2月)の受験では、このテキストの学習だけで試験に臨んでしまいましたが、後から考えてみれば不充分でした。
TC技術検定受験対策セミナー
試験日の約一カ月前に、「TC技術検定受験対策セミナー」が開催されています。2022年現在はZoomのウェビナー形式で、オンラインでの受講が可能です。
私は、1回目(2022年2月)の受験の際はこのセミナーを受講せず、2回目(2022年7月)の受験前には受講しました。(ちなみに、2022年7月の受験に向けたセミナーについては「再チャレンジ応援キャンペーン」が開催されており、前回の試験で不合格だった人向けに受講料半額で受けることができました)
結論としては、合格率を上げたいのであればこのセミナーの受講も必須だと思いました。
理由として、まずセミナーを受講すると、「日本語スタイルガイド」の中でどの部分が試験に出やすいか、どの部分があまり出題されないのかという出題範囲を、かなり具体的に知ることができます。当然、効率的な学習が可能になります。
また、Zoomでのオンラインセミナー形式ですが、疑問点がある場合はセミナーの中で講師の方に質問できます。
セミナーの事前資料としては、試験の概要と練習問題が配布されます。練習問題は、試験本番と同様、選択問題と記述問題があります。
選択問題は「日本語スタイルガイド」に掲載されているものだけだと数が少なく、記述問題についてはセミナーの配布資料とサイトにある例題しか参考になる練習問題がないため、事前に学習できる貴重な機会となります。
試験対策(2回受けてみての感想)
選択問題について
選択問題については、すべて「日本語スタイルガイド」の内容から出題されます。出題範囲については、前述のようにセミナーを受講することで絞り込むことができますので、セミナーを受講したうえで重要な部分を中心に学習するのがお勧めです。私自身は手書きしたほうが頭に入るタイプなので、テキストを読みながら要点をノートに書き出すという方法で学習しました。選択問題はテキストの内容が頭に入っていれば解けるので、基本的には暗記が重要かと思います。選択問題なので、何となくでも記憶にあれば正解を選べる可能性は高いです。
直接的な試験対策としては、数は少ないですが「日本語スタイルガイド」に載っている練習問題と、セミナーで配布される練習問題を繰り返し問いてみることが重要です。何回か解くと暗記してしまう程度の分量ですが、「日本語スタイルガイド」の内容をどの程度理解しているかの目安にはなります。
記述問題について
記述問題は、1回目の受験の際はとにかく「時間が足りない」という感想でした。私の場合、選択問題は合格ラインだったのですが、記述問題で得点が足りず不合格となりました。記述問題も全て埋めることはできたのですが、時間ギリギリだったので見直す時間はほぼゼロという状況でした。
試験結果としては合否と得点しか通知されず、具体的にどの問題が間違っていたのかはわかりません。ただ、反省点として「良かれと思って原文をアレンジした結果、かえって減点された」ということがありました。私の場合、なまじ実務経験が長いだけに、採点範囲以外の文章を変えすぎたことで減点されてしまったようです。基本的に減点方式で採点されており、採点ポイント以外の文章をアレンジしても加点は難しいのではないかと思います。
実際に、セミナーで配布された記述の練習問題も、模範解答は原文を生かしたうえで採点ポイントだけ的確にリライトしたものでした。
そこで、2回目の受験の際は、心構えを変えて「リライトする際のポイントは問題文に書いてあるので、そのポイント以外は原文をそのまま書く」ことを徹底しました。結果的に、記述問題の得点も合格ラインまで引き上げることができました。
記述問題については、「日本語スタイルガイド」には練習問題がありません。セミナーに参加して、配布された練習問題を繰り返し解くことは重要です。記述問題は、例文を一定の条件でリライトする形式のため、
・問題に書かれた改善ポイントを把握し、的確にリライトする
・上記ポイント以外は原文を変えない
以上を心がけることが重要と感じました。
まとめ
実に13年ぶりの受験でしたが、以前のテスト(まだカテゴリが「初級」「上級」だった頃)は記述問題に苦戦した記憶はなく、現在はかなり難しくなっている印象でした。選択問題は「日本語スタイルガイド」の内容を頭に入れればどうにかなるのですが、記述問題はある程度適切な準備をしておかないと、一夜漬けでの合格は厳しいように思います。
また、試験を受けるにあたって「日本語スタイルガイド」最新版の購入は必須となりますが、セミナーの受講もほぼ必須と言ってよいレベルだと思います。私の場合、2月はセミナーを受けずに受験しましたが、結果的にかなり効率の悪い試験対策になってしまったという反省が残りました。
3級の上には「2級 使用情報制作ディレクション試験[DR]」「2級 使用情報制作実務試験[MP]」という2種類の試験があります。過去の合格者を見ると合格率はかなり低く、特に「2級 使用情報制作ディレクション試験[DR]」は直近試験での合格者なしとかなりの難関のようです。(そもそも受験者数が20~50人程度とかなり少ないですが…)
分析データを見るに、実務経験が長ければ必ずしも合格率が高いというわけでもなさそうなので、テキスト・セミナーを中心とした学習で臨むしかなさそうです。次回はおそらく来年2月の開催になりそうですが、内容を精査のうえ受験を検討したいと思います。