概要・課題
シャープ株式会社さまの液晶テレビ「AQUOS」が発売された2001年から2013年のモデルまで、製品に付属している取扱説明書は紙媒体のみでした。
紙媒体の取扱説明書しかない時代において、そのページ数は200ページ前後と非常に分厚く、エンドユーザーからの問い合わせの多さや印刷コストなど、複数の課題がありました。
中でも、「参照ページ」の正確な掲載は、大きな課題の一つでした。
「取扱説明書」はその性質上、書籍のように1ページ目から順番に読んでいくようなものではありません。
たとえば、「目次」「故障かな?と思ったら(トラブルシューティング)」「索引」のように情報がまとまったページや、関連項目の参照ページ等から、欲しい情報にアクセスすることになります。
このような使用方法を前提とした場合、ユーザーは必要に応じて欲しい情報だけを素早く確認したいため、検索性が重要になります。
参照ページの掲載数は取扱説明書のボリュームによってまちまちですが、200ページほどの取扱説明書では1000か所以上と、大量の参照ページが記載されていました。
この参照ページは、記載されている数だけ、表記が正しいかどうかをチェックする必要があります。1000か所程度となると、ページネーションが変更となるたびに、チェック・修正のため膨大なリソースが必要となっていました。
ターゲット
クライアント:シャープ株式会社
利用者:液晶テレビ/有機ELテレビ「AQUOS」エンドユーザー
こだわったポイント
2010年代初頭より、弊社にて制作する紙媒体の取扱説明書では、InDesignの「相互参照」という機能を用いて参照ページの自動リンクを設定しています。
たとえば、【詳しくは、●●ページの「××」をご覧ください。】という文章があったとしましょう。
従来、上記「●●」「××」部分には普通にテキストを打ち込んでいました。
InDesignの「相互参照」機能を使う場合は、たとえば上記の【詳しくは、●●ページの「××」をご覧ください。】という文章であれば、「××」という見出しのテキストに対してInDesign上でリンクを設定します。
この「相互参照」さえ設定しておけば、たとえば「××」という見出しの前に新しいページが挿入されてページ番号が変わったとしても、「●●」ページの数字は自動的に更新されます。
以下の画像は、液晶テレビ「AQUOS」の取扱説明書で「相互参照」機能を使用した実例です。
「故障かな?と思ったら」(46ページ)という表記のうち、「46」という数字の部分は、「故障かな?と思ったら」の見出しのあるページ番号を抽出したものです。
このように、InDesignの機能を活用することによって、参照ページのメンテナンスにかかるリソースを大幅に低減し、素早く正確な作業が可能となりました。